「決定版 感じない男」

ちくま文庫「決定版 感じない男」森岡正博 著
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最近、身近な方が話題にしていたので、読んでみました。
哲学者の方の著作を読むのは、中島義道さんの一連のエッセイ以来。
難しいかもな、と身構えていたんですが、読みやすい文体でするっと半日で読了。

自分自身の精神とセクシャリティをまっすぐに見つめた上で、読み物として、社会評論としてスリリング。

「子どもから少女へ」の越境、性なき存在が、多くは外的要因、ぶしつけな「視線」や「侵害」から女という性を受け容れざるをえなくなっていく……という物語はよく語られますが、同じ時期の「子どもから少年へ」は自分自身に裏切られる形で始まるということが、実際に男性から語られるのは珍しい。
「女にならざるを得ない」と同様に「男にならざるを得ない」という視点にはっとさせられました。

少女に仮託してしまい、ときに暴力へと至る欲望の根源は自己否定ではないか?
第四章は腑に落ちる組み立てで、面白かったです。

同じ著者の「無痛文明論」が気になるので、本屋さんで探してみようと思います。