「オーケストラ!」 Le Concert

NHK BSで観ました。
しばらくロシア映画を観ていなかったので、なにかロシア語を聞きたいなと思ったときに、偶然番組表で見つけ、最初の10分ほどを見逃してしまったのが残念。

ボリショイ劇場の清掃員にして、アルコール依存症の元天才指揮者。
清掃中に「パリの劇場で演奏する、穴埋めの楽団を探している」というFAXを見つけ、かつて彼とともに演奏していた元楽団員たちを集め、およそ30年ぶりに指揮台に立つ……という出だしはコメディ調。

が、パリに到着するや、ストーリーは大きく動く。

指揮者アンドレイがパリで演奏をやろうとした理由が、30年前の共産党によるユダヤ人排斥に巻き込まれ、途中で中断させられた演目を、再び最後までやりとげたい、という背景。
抜擢した若きバイオリニストの女性、アンヌ=マリーが、「生き別れになった娘では?」と見せかけて……という結末は、音楽の業を感じさせ、深みがありました。
あそこで血縁だと、オーケストラを題材にする意味はないよね。

アンドレイだけでなく、すべての登場人物に「現代から30年」という時間をどう生きてきたかが、さらりと描かれているのも良かった。

ラスト、素晴らしい演奏に重ねられる、アンドレイ楽団の快進撃、あれはアルコール依存症が幻なのか、未来像なのか、はっきりは描かないところも、甘すぎず、いい後味でした。

冒頭を見逃してしまったので、DVDを探そうと思います。

「インスタント沼」

「インスタント沼」をDVDで観賞。

全体にテレビドラマっぽい(テレビ朝日の深夜ドラマっぽい)映像でしたが、テンポよく、気持ちのいい映画でした。

小ネタの詰め込み具合に気を取られて笑っているうちに、ヒロインをとりまく世界がふわりと、しかし大きく動いていくのが面白いです。恋愛も友情も仕事も家族関係も、ど派手に変わるのではなく、わずかに、しかしヒロインの心のありかただけが決定的に変化するのが良い塩梅で好きです。
わざとらしくないというか、シャイな映画ですね。好きです。

曲がった釘、朝食用のインスタントドリンク、沼、河童、一般にありえないと思われているもの……などなど、巻かれた小さなフックがきれいに回収されていくのも心地良かった。おすすめです。

「ブロウ」(2010)

「ブロウ」(2010)

BSでやっていたので、偶然観ました。
実話がベースと番組表に書いてあったのに興味をひかれて。

自分の子供時代の二の舞はすまいと、金、気の合う女、愛する子を持ったはずが、結局、親と同じことを繰り返してしまう。さらには自分は父親を愛し続けられたけれど、娘には捨てられるという結末。この連鎖感は山岸凉子さんの漫画っぽいなと思いました。
息子を愛し続け信じ続ける父、否定し限界を越えたあとは拒絶する母、それぞれ、理解できました。
父親があそこまで愛し続け許し続けてしまったがゆえに、ジョージは更正しきれなかったのかもしれない。母親のような厳然とした態度が必要だったのかも……と考えつつも、老いた父だけが息子からのカセットテープを病身にむちうって聞いてくれるシーンは泣いてしまいました。
そのあとの、愛娘クリスティーナの面会が幻覚だったとわかるシーン、最近の映画だったら本当に尋ねてきちゃうんだろうなあ、でもここは幻覚なのがすごくよかった。悲しいけれど。許さないことで忘れてくれていない証かな、とも。

終盤は、猫を抱きしめながら観てました。

それにしても、今まで意識したことなかったんですが、ジョニー・デップってかっこよかったんですね。世間知らずのまま、麻薬密売の頂点に上り詰めてしまったジョージの危うさと悲しさ、良かったです。