中島らも

本棚の整理をしていたら、買ったきり読んでいなかった、
中島らもの文庫本が2冊出てきました。
仕事場への行き帰りに読もうと思います。

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「ブロウ」(2010)

「ブロウ」(2010)

BSでやっていたので、偶然観ました。
実話がベースと番組表に書いてあったのに興味をひかれて。

自分の子供時代の二の舞はすまいと、金、気の合う女、愛する子を持ったはずが、結局、親と同じことを繰り返してしまう。さらには自分は父親を愛し続けられたけれど、娘には捨てられるという結末。この連鎖感は山岸凉子さんの漫画っぽいなと思いました。
息子を愛し続け信じ続ける父、否定し限界を越えたあとは拒絶する母、それぞれ、理解できました。
父親があそこまで愛し続け許し続けてしまったがゆえに、ジョージは更正しきれなかったのかもしれない。母親のような厳然とした態度が必要だったのかも……と考えつつも、老いた父だけが息子からのカセットテープを病身にむちうって聞いてくれるシーンは泣いてしまいました。
そのあとの、愛娘クリスティーナの面会が幻覚だったとわかるシーン、最近の映画だったら本当に尋ねてきちゃうんだろうなあ、でもここは幻覚なのがすごくよかった。悲しいけれど。許さないことで忘れてくれていない証かな、とも。

終盤は、猫を抱きしめながら観てました。

それにしても、今まで意識したことなかったんですが、ジョニー・デップってかっこよかったんですね。世間知らずのまま、麻薬密売の頂点に上り詰めてしまったジョージの危うさと悲しさ、良かったです。

「決定版 感じない男」

ちくま文庫「決定版 感じない男」森岡正博 著
LIfestudies.org/jp

最近、身近な方が話題にしていたので、読んでみました。
哲学者の方の著作を読むのは、中島義道さんの一連のエッセイ以来。
難しいかもな、と身構えていたんですが、読みやすい文体でするっと半日で読了。

自分自身の精神とセクシャリティをまっすぐに見つめた上で、読み物として、社会評論としてスリリング。

「子どもから少女へ」の越境、性なき存在が、多くは外的要因、ぶしつけな「視線」や「侵害」から女という性を受け容れざるをえなくなっていく……という物語はよく語られますが、同じ時期の「子どもから少年へ」は自分自身に裏切られる形で始まるということが、実際に男性から語られるのは珍しい。
「女にならざるを得ない」と同様に「男にならざるを得ない」という視点にはっとさせられました。

少女に仮託してしまい、ときに暴力へと至る欲望の根源は自己否定ではないか?
第四章は腑に落ちる組み立てで、面白かったです。

同じ著者の「無痛文明論」が気になるので、本屋さんで探してみようと思います。

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