「インスタント沼」

「インスタント沼」をDVDで観賞。

全体にテレビドラマっぽい(テレビ朝日の深夜ドラマっぽい)映像でしたが、テンポよく、気持ちのいい映画でした。

小ネタの詰め込み具合に気を取られて笑っているうちに、ヒロインをとりまく世界がふわりと、しかし大きく動いていくのが面白いです。恋愛も友情も仕事も家族関係も、ど派手に変わるのではなく、わずかに、しかしヒロインの心のありかただけが決定的に変化するのが良い塩梅で好きです。
わざとらしくないというか、シャイな映画ですね。好きです。

曲がった釘、朝食用のインスタントドリンク、沼、河童、一般にありえないと思われているもの……などなど、巻かれた小さなフックがきれいに回収されていくのも心地良かった。おすすめです。

ムーンライダーズ LIVE 2014 “Ciao! Mr. Kashibuchi”

ムーンライダーズ LIVE 2014 “Ciao! Mr. Kashibuchi” 12月17日 日本青年館

行ってきました。中野サンプラザでの休止直前ライブから3年ぶりのムーンライダーズ。
80年代90年代の懐かしい曲を、シンプルなアレンジで、シンプルなステージで。
追悼ライブという形でありながらも、あくまで、いつものムーンライダーズの演奏、演出、MCで。

この、そっけなさに慎重に隠したハートが心地良い。

へたに泣かそうとしてこないところがムーンライダーズだよな、と、嬉しかったです。
慶一さんはいつもどおり輝いてて、日本一格好良かった。

曲ごとに様々な「あの頃」を思い出すつくりの中、照明の使い方が印象に残りました。
「Kのトランク」からはじまる繊細な光の使い方は、もはや光がひとつの楽器です。かっこよかった。しびれた。

バンドの背後から照らす、スモークで煙る光の中、まったくいつものようにふらっと集まって、ふらりと楽しげに演奏するムーンライダーズ。天国のかしぶち哲郎さんへ捧げるライブというより、「天国まで遊びに行って一緒にライブしてきたよ」という風情。ステージ上は異世界でした。照明、すごかった。感動しました。

泣かないで楽しもうと思って行ったのですが、「スプーン一杯のクリスマス」の最初のドラムの入り、あの明るいリズムが胸に染みて、涙ぐんでしまいました。

ムーンライダーズは別れの曲が多いので、妙にしんみりもしつつ。
かしぶちさんがいたら、どんなドラムになったのか、と考えてみたり。「その日の気分とコンディションだから、僕にもわからないよ」と言われるだろうなと想像したり。
特別な夜でした。

トリビュートアルバム、帰宅したら届いていたので、さっそくiPhoneに入れようと思います。

またふらっと、ムーンライダーズライブ、やってほしいな。

ナイロン100℃ 「社長吸血鬼」

10月になりますが、観てきました。
ムーンライダーズの鈴木慶一さんとのバンド活動などでも知られるケラさん。
脚本家としての活動を私が知ったのは「時効警察」の時で、
いつかこの方の書かれた脚本の舞台を観たいと思っていました。

豊田商事事件をベースに、現実と幻想がいりまじり、
過去と現代が混濁したまま物語が進んでいく……と書くと社会派の真面目な作品のようですが、
実際に観ると印象は真逆。

殺伐とした職場のあるあるコメディ、謎のとぼけた老人たち、
頭のおかしい探偵などを、笑いながら追いかけていくうちに、
徐々に裏に隠れた恐ろしさが滲みだしてきて、世界が壊れていく。
ラストの破局で幕が下りてもよいだろうに、それぞれの現実は続き、
ふんわりした笑いに着地させて、後味もいい。凄いものを観ました!!!

プロジェクションマッピングには、これまで、あまりいい印象がなかったのですが
(色がどぎついし、ライトアップ用のものだと思い込んでいたので)、
舞台のセットに重ねて使うと、こんなにも効果的になるのかと感動しました。
他のお芝居でも、同様に面白い使い方をしていて、これ、ぜんぜんアリですね。
開放空間より閉鎖空間で、物語が進行する中で使うと威力を発揮するテクノロジーだなと。

二時間半1幕、まったく退屈することなく、夢中で観ました。
ナイロン100℃の公演は、今後も追いかけたいです。